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『テイルズ オブ』シリーズの危機を救う、『テイルズ オブ アライズ』で挑戦した継承と進化【CEDEC+KYUSHU 2021】(ファミ通.com)

 2021年11月27日~28日の期間中、オンライン上で開催された“CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE”。本イベントは、日本最大のコンピューターエンターテインメント開発者向けのカンファレンスとしておなじみのCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)の九州版だ。

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 その初日となる27日のトップとして、基調講演“『テイルズ オブ アライズ』で挑戦する長寿シリーズの継承と進化”が披露された。登壇したのはバンダイナムコエンターテインメントの『テイルズ オブ』シリーズIP総合プロデューサー・富澤祐介氏。司会はサイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏が務め、松山氏ならではの切り口で富澤氏に切り込んでいくシーンも多々見受けられた。

150万本突破の『テイルズ オブ アライズ』

 『テイルズ オブ アライズ』は、2021年9月9日に発売された『テイルズ オブ』シリーズ最新作。前作『テイルズ オブ ベルセリア』から数えると5年ぶりの家庭用ゲーム機向けに発売された新作となる。ユーザーからの評価も高く、これまでワールドワイドで150万の売上を突破している。なお、販売数100万本は発売一週間で到達したというからその注目ぶりがうかがえる。

『テイルズ オブ アライズ』がシリーズ史上最速のスピードで世界累計出荷本数100万本を突破! アートディレクター岩本稔氏の記念イラストも公開
https://www.famitsu.com/news/202109/16233968.html

 前作『テイルズ オブ ベルセリア』と比べると、『テイルズ オブ アライズ』の開発費は3倍にもなっているそう。ファンからしてみると驚きの数字だが、『テイルズ オブ ベルセリア』はプレイステーション3と4、『テイルズ オブ アライズ』はプレイステーションでいうと4と5の世代になる。まるっと1世代違うので、松山氏いわく「そりゃそれくらいになるよね」と、現状の開発規模で考えると当たり前の数字になるようだ。

 膨れ上がった開発費用を回収するためにも、売上目標も大きくなる。そのために、ゲーム的にも進化をし、よりファン層を広げるべく、ゲーム的なアプローチやシリーズ初のワールドワイド同時発売を目指したのだという。

 そしてお話は富澤氏が『テイルズ オブ』シリーズに参画した、当時の状況について。富澤氏が関わってから約5年経過しての発売となった『テイルズ オブ アライズ』だが、関わり始めたのは『テイルズ オブ ベルセリア』の開発がほぼ終了し、販売部分をプロデュースし始めたあたり。

 そこから富澤氏は、ほぼイチから『テイルズ オブ アライズ』のコンセプトなどを固めていったそうだ。

一度失った信頼を取り戻すために

 しかし、やはり簡単に産み出せるものではなかったという。

 『テイルズ オブ』シリーズは2015年に『テイルズ オブ ゼスティリア』、2016年に『テイルズ オブ ベルセリア』が発売された。詳細は省略するが、『テイルズ オブ ゼスティリア』は、発売後にキャラクターやシナリオ面をメインにさまざまな意見の挙がっていたタイトルだ。その影響や、前作と世界観が共通していることもあり、次作『テイルズ オブ ベルセリア』は評価は高かったものの売り上げにつながるのには時間がかかったという。

 ゲーム製作におけるプロデュースで、富澤氏がとくに大事にしているのがユーザーとのコミュニケーションだという。そういったことが起きたのも、ユーザーとのコミュニケーションで掛け違えてしまったからだと富澤氏は分析。『テイルズ オブ アライズ』は、そんな状況下の中で、どのように新作を売るのか、そしてファンからの信頼をいかに回復させるのか、というのが富澤氏の使命だったのだ。

 そんな中、富澤氏は改めて『テイルズ オブ』シリーズの“らしさ”を考えて、キャラクター性を重視した日本らしいRPGを遊べるのが、『テイルズ オブ』シリーズの魅力だと再確認したそうだ。そして、ほかのゲームもたくさんある中、『テイルズ オブ』シリーズがファンに受け入れられていたのは、そういった体験が安定して楽しめるところにもあると分析。しかし、“安定して楽しめる”という信頼も1度崩れてしまったわけだ。『テイルズ オブ』シリーズがなくなってしまうかもしれない、大きな“危機”に立っていたのである。

 そこから、『テイルズ オブ アライズ』の原型制作が始動する。シリーズも25周年(開発開始当時は20周年)を迎え、ファンとともにシリーズを発展させるためにも、ファン層の裾野をより広げる必要があった。また、以前より増加傾向のあった海外ファンの獲得も狙う。さらに、「昔は遊んでいた」という回帰層も視野に入れて企画を進行することに。

 『テイルズ オブ』シリーズの評価されている部分は残しながら“魅力の本質”を味わえるよう変化を加えていったという。つまりはほぼほぼ全ゲームファンを狙ったとも言えるだろう。そういったさまざまな挑戦と変更を加えるべく、『テイルズ オブ アライズ』は発売前から掲げていた“継承と進化”という言葉が、開発とファンに向けての両方でテーマになったのだ

具体的な“継承と進化”の狙い

 ではどのように継承と進化を目指したのか、という本セッションのメインパートへ。まず、富澤氏から本作におけるすべての要素での目標が紹介された。

 それは

プレイヤーが『テイルズ オブ』シリーズに入りやすい
スムーズでストレスがない
いままで以上に没入感のある体験
キャラクター性を重視した日本製RPG体験

 を満たしているというもの。

絵画のような絵作り

 まずはグラフィックについて。

 『テイルズ オブ アライズ』には、“アトモスシェーダー”と呼ばれる、絵画のような独特のグラフィックスタイルが採用されている。『テイルズ オブ』シリーズと言えばイラスト調のグラフィックが特徴だった。イラストを“絵画”と捉え継承・進化させることにより、その質感や没入感のアップを目指したのだ。

 目標にはしていたものの、実際に“アトモスシェーダー”がどう形になるのかというのはグラフィックチームともずっと不安だったそうで、この点は開発終了まで調整していたのだとか。

 また、シェーダーのみならず、背景やキャラクターなどの世界観からの全体的なデザインや、3Dムービーシーンのパワーアップなども図ったほか、これまで踏襲されていた2Dと3Dグラフィックを使用する場面を整理したという。

アクション性の高いバトル

 続いては、バトルについて。

 『テイルズ オブ』シリーズはアクション性の高いバトルが特徴で、『テイルズ オブ アライズ』ももちろん踏襲している。ただ、今回は最初に一度“アクションゲームのおもしろさとは何なのか?”という点に立ち戻り、そこから『テイルズ オブ』シリーズらしいバトルに落とし込んでいったのだそう。

 画面にゲージ類はあるものの、ゲージとにらめっこしながら技を出すようなゲーム性ではなく、敵そのものを見ながら戦えるシステム、画面や演出作りをおこなった。さらにはハード性能の進化を活かし、基本4人パーティでありながらも6人全員で戦っている共闘感を強めたのだとか。

 全編クリアーした松山氏がとくに感心したというのがバトルのモード変更について。

 『テイルズ オブ アライズ』には全部自分で操作する“マニュアル”、敵まで攻撃時に自動で移動する“セミオート”、完全自動で戦う“オート”の3種類のバトルがある。プレイスタイルに合わせて選べるモードについて褒めつつも、松山氏は「作る側で考えたら、絶対デバッグ嫌やん?(笑)」と、製作者ならではの大変さを感じたそうだ。

 これまでにも『テイルズ オブ』にモード変更はあった。松山氏は『テイルズ オブ アライズ』は、アクションゲームばりのアクションがあるにも関わらず、モード変更を踏襲したのだから、制作がメチャクチャ大変になることが分かっているので、驚いたわけだ。

 『テイルズ オブ』シリーズにはバトルが好きな人もいれば、物語だけを楽しみたい人も多くいるため、絶対に取り入れなくてはならない要素として認識していたと富澤氏は語る。また、アクション性を高めたことにより純粋に難しくて進めない人も出てくる可能性も考慮して、難易度選択もさらに幅広いものを用意したという。

ジャンプが可能な探索要素

 おつぎの話題はフィールド。

 『テイルズ オブ アライズ』ではフィールド中もジャンプアクションが可能になり、探索の自由度が大幅に広がった。ゲーム性の拡張ももちろんだが、キャラクターたちがそこで生きている雰囲気がより味わえることから取り入れたそうだ。低い段差も超えられない、水も泳げないとなるとどうしてもゲーム感が出てしまい、キャラクター性も薄まってしまうことを危惧したとのこと。

 フィールドには『テイルズ オブ』シリーズらしい味付けとして、フィールド中にはキャラクターたちにどんどん喋ってもらう“ショートチャット”要素を大幅に強化した。ロケーションや行動に合わせて会話をくり広げることで、パーティで冒険している感じやキャラクター性を強めたのだという。

 松山氏は「ジャンプした先、泳いだ先に宝箱があったりして、そこがいい」と称賛。新しくアクションができるようになった、だけではプレイヤーが楽しむ要素にはならないそうで、そこがゲームデザインにつながっていることについて褒めていた。

フルオケ対応の楽曲面

 音楽は『テイルズ オブ』シリーズらしく全編通して桜庭統氏が作曲。没入感をより高めるべく、フルオーケストラ収録に臨んだそうだが、『テイルズ オブ』シリーズで桜庭氏がフルオケに挑むのは、じつはこれが初だったのだとか。

 また、物語の重要なシーンで、劇中歌としてMy Little Loverの『Hello, Again~昔からある場所~』(本作では絢香さんによるカバー曲)が流れる。1990年代を彩る名曲のひとつを、なぜ今回カバー曲に採用したのか松山氏が尋ねると、じつは昔は『テイルズ オブ』シリーズを遊んでいた年齢層のプレイヤーを狙って取り入れた要素なのだとか。25年前の曲でどの曲がいいか調べていくうちに、歌詞がピッタリだということで『Hello, Again~昔からある場所~』決めたそうだ。

 なお、この曲はCM等にも使用されており、松山氏は単純なるCMタイアップ曲だと思っていたところ、実際にプレイしていたときには、重要かつピッタリなシーンで流れて驚いたという。

感情に寄り添うストーリー

 最後に物語について。

 ストーリーはシンプルにしつつ、謎がつぎつぎと語られていくような、飲み込みやすいものを目指したという。富澤氏は「奴隷の主人公が、自由を求めて5つの国を開放する話です」と、本作のストーリーを超簡潔に説明。それくらい、1発でどんな話なのか分かるほか、目的が単純明快でユーザーが疑問に思わないような設定を心掛けたそうだ。

 キャラクターたちの感情も、プレイヤーの心情と乖離しないような表現で、物語の展開を目指したとのこと。『テイルズ オブ』シリーズはキャラクターの個性も当然魅力だが、個性的すぎるがゆえにプレイヤーに「えっ!?」と思わせるような行動や発言をしてしまう登場人物も少なからず存在した。そういった部分がないように、プレイヤーの心情に寄り添ったということだろう。

ファンとの交流がとても大事

 松山氏のサイバーコネクトツー社内でも多数の社員が『テイルズ オブ アライズ』を遊んだそうだが、今回シリーズに初めて触れるという若い社員も多かったそうだ。なぜいままで遊んだことがなかったのか? なぜ今回遊び始めたのか? という理由を松山氏が聞いてみたところ、「今回は(『テイルズ オブ』シリーズを)初めて遊んでもいいのかな、と思いました」と答えたそうだ。

 それぐらい、新規層には入りにくい、『テイルズ オブ』シリーズのハードルというものがやはりあったのではないかと松山氏は分析。それが、今回の『テイルズ オブ アライズ』ですべて取っ払われたように見えたと、ハードルを大きく下げられたことにも松山氏は絶賛していた。

 富澤氏はまさに狙い通りといった感じで、最初の企画書にも“これなら自分でも遊べる『テイルズ オブ』”と書いていたのだとか。そして25年目にして、新たな門出を迎えた『テイルズ オブ』シリーズを見据えて、新たなファンが付いてきてくれるような、ここからのブランド運営が大事だと富澤氏はアピール。

 たとえばブログの設立や、ブランドサイトの制作。さらにはファンミーティングやYouTubeチャンネルの設立など、とにかくファンとのコミュニケーションが取れる手段を多数つくっていったという。

何度もブラッシュアップした1年

 最後にまとめの説明を終えていく中で、松山氏が鋭い質問を飛ばす。

 “意図しないところでユーザーへストレスを与えない”、ということについて、松山氏はプレイしていて個人的な感覚で言及。松山氏は遊んでいて、“ここもうちょっとああなっていたらいいのに”という要素が基本的になくて、全部拾われていたことに驚いたそうで「なるほど、と思いました。これ開発は5年と言っていますが、たとえば4年かけて完成し、そこから1年かけて全部チューニングしましたよね?」と質問。富澤氏いわく、ズバリその通り。『テイルズ オブ アライズ』は当初2020年発売予定だったが、2021年発売となったのもそこが理由のひとつだという。

 よりブラッシュアップしたい、よりこだわり抜きたい、と全スタッフが手を抜かずに作り込んでいったため、最後の期間で開発時間が伸びたのだとか。

 たとえば、ショートチャットのセリフは完成し切った風景を見てから追加・変更したものもあるので、最後の1年で録音し直した箇所もあるそうだ。通常ならば予算やスケジュールの都合によりそういった作り直しは難しいようで、富澤氏は「普段ならできません」と語っていた。松山氏も「ゾッとするわ……」とコメント。「みんなコレわかってる!? 開発1年延期って、きっとこれだけで予算がふた桁億円と動いてるからね!?」と、そのゾッとした理由も語っていた。

 それもこれも、ユーザーに新たな『テイルズ オブ』シリーズを受け入れてもらいたい、という一心でスタッフ一堂が取り組んだ結果、150万本突破のヒットにつながったのだろう。バンダイナムコエンターテインメントとしても、絶対にユーザーを楽しませるゲームを作らなくてはならないと、予算面についても承諾が降りたのだそうだ。

 といった中で、セッションも終了のお時間へ。最後には、サイバーコネクトツーの社員たちより、『テイルズ オブ アライズ』の制作術についてゲーム開発者の目線から質問が飛び、それに回答していく形で、本セッションは終了となった。

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