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ビジネス特集 会社に「ヘンズツウ部」ができて起きたこと | 働き方改革 | NHKニュース

会社に「ヘンズツウ部」ができて起きたこと

「月に2、3回は頭痛の発作が起きます。そんなときは会議室で電気を消してじっと痛みが引くのを待つんです」
こう打ち明けたのは、都内の会社に勤務する30代の女性です。偏頭痛に限らず不眠症や生理痛、肩凝りなど、ほかの人から分かりにくい健康課題に悩んでいる人は少なくないと思います。コロナ禍でリモートワークが広がりお互いの状況が見えにくくなるなか、求められる“想像力”とは。(首都圏局記者 氏家寛子)

頭痛くらいなんとかならないの

製薬会社「日本イーライリリー」に勤める間宮真矢さんは、10代の頃から偏頭痛に悩まされてきました。それは会社に入ってからも続き、特に忙しく仕事をこなしたあと痛みに襲われるといいます。

間宮さん
「プレゼンの準備をした時などすごく集中した次の日に発作が起きることが多いです。激しい痛みで動けなくなったり、吐き気を伴ったりします」

長年悩んできましたが自分が我慢すればいいと考え、上司などには相談できませんでした。そのときの気持ちをこう話しました。

間宮さん
「実際に『頭痛くらいで』とか『休まないでなんとかならないの』と言われたこともありました。発作が起きるたびに誰かに迷惑をかけてしまうという気持ちが強かったので、我慢しなきゃいけないものだと思い込んでいました」

「ヘンズツウ部」発足!

2019年の秋、そんな間宮さんに転機が訪れました。社内の打ち合わせで同じように悩んでいる社員が多くいることがわかったのです。

自分たちで働きやすい職場環境をつくろうと、当事者などが集まって立ち上げたのが「ヘンズツウ部」でした。

偏頭痛のない社員とディスカッションしたときのことが印象に残っていると振り返ります。

間宮さん
「当事者どうしで偏頭痛のつらさやそれを伝えられない苦しさについて話したら、わかるわかると盛り上がったんです。その気持ちを偏頭痛を持っていない人たちに伝えると『そんなにつらかったんだ』とか『休んでいいよ』と共感してもらえてうれしかったのを覚えています」

ヘンズツウ部の活動は

1 ポスター掲示

間宮さんたちはまず職場の人に理解を深めてもらおうと、オフィスの目につく場所にポスターを掲示しました。

頭痛だけでなく、光や音、臭いなどに過敏になったり、吐き気をもよおしたりする症状が出ると伝えました。

2 休憩場所マップ作成

さらに症状が出たときにオフィス内で休憩できる場所をまとめたマップをつくりました。

窓から日が差し込む明るいオフィスは、偏頭痛の症状が出た人にとってはつらい環境になることがあります。そこでフロアごとに日ざしが入りにくく音も静かな席や会議室合わせて11か所をピックアップし、全社員に周知したのです。

「上司に相談する」10%↑

部の活動は少しずつ社内で認知されて、当事者だけでなく家族や知人が偏頭痛に悩んでいる社員も入部、部員は100人を超えました。

こうした活動は職場に変化をもたらしました。全社員を対象に行ったアンケートでは、体調不良時に「上司に相談する」という回答が活動前と比べて10ポイント余り上昇したのです。

間宮さん
「このつらさを誰にも言えないまま終わるのかなと思っていたので、共感できる仲間と知り合えてよかったです。つらいときは休むことが当たり前と思えたこと、周囲の人も心からそう思ってくれるようになったことがうれしかった」

みえない多様性

新型コロナウイルスの影響が続くなか、会社では新たな展開も生まれています。リモートワークの導入が進む一方、お互いの状況が見えにくくなったと感じている人もいます。

4人の部下を持つ管理職の古城大亮さんはこう話します。

古城さん
「新型コロナの影響でお互いの仕事がすごく見えにくくなっています。どういう状態でいるのかをこちらから聞くことも必要ですが同時に難しさも感じます。実は自分もリモートワークによる腰痛で立てなくなったことがあったんです」

偏頭痛だけでなく不眠症や生理痛、肩凝り、腰痛などほかの人から見えにくい健康課題に悩んでいる社員は少なくないのではないか。

ヘンズツウ部の活動をきっかけに、会社ではさまざまな健康課題や周囲に理解されないことによる働きづらさを「みえない多様性」と定義しました。

そして「アシックス」や「パソナ」などほかの企業などと共同でプロジェクトを立ち上げ、オンラインでできるカードゲームを開発したのです。

開発したカードゲーム

カードゲームは青と赤の2つのカードを使います。

青いカードには、一見すると自己中心的に感じる社員の行動が書かれています。例えば、「健康理由で午前休をとったのに飲み会には参加している。なぜでしょう」といったものです。

その理由を想像し、赤いカードに書かれた36の単語から選んで説明するというのがルールです。当事者の立場で考える“想像力”を養うのがねらいだといいます。

管理職が挑戦 ~相互理解のきっかけに

古城さんやほかの会社の担当者が参加してリモートでカードゲームに挑戦しました。

お題はこちらです。

『チームでとてもよい雰囲気で会議をしていたのに急に機嫌が悪そうな顔をしている なぜでしょう』

悩んだ末、古城さんは『腰痛』と『椅子』のカードを選び、次のように理由を考えました。

「その人は腰痛を持っていて、椅子に座りっぱなしで痛みが出て機嫌が悪そうに見えた」

一方、『香水』のカードを選んだ別の参加者は次のように説明しました。

「すごく香りの強い香水をつけている人がいて、それが原因で偏頭痛の発作が出た。周りから見たら不機嫌に見えてしまうこともあると思います」

古城さんはカードゲームが相互理解のきっかけになると感じたといいます。

古城さん
「自分が頑張っているからほかの人も頑張るべきという考え方だと、最終的には押しつけている感じになる。頑張れるところもつらいところも一人ひとり違うので、それを細かく見ていき個人の能力を生かすことがチームワークを発揮することにつながると感じました」

専門家「企業のメリットに」

長年、産業医を務めるNPOの理事長は、従業員の健康を守る職場環境が企業のメリットにつながると指摘しました。

岡田理事長
「働きやすく風通しのいい職場、そして上司と部下がコミュニケーションがとれる職場をつくることが企業の発展に寄与します。少子高齢化で働き手が少なくなる中、従業員に気持ちよく働いてもらい生産性を上げていくことが重要になってきています。日本の労働生産性はフランス、アメリカ、ドイツに比べて非常に低いのが現状で、それをいかに改善するかという点で健康経営という考え方が急速に広がっているのだと思います」

※このカードゲームは、製薬会社「日本イーライリリー」のホームページから無料でダウンロードできます。

首都圏局記者
氏家 寛子
平成22年入局
岡山局、新潟局などを経て現所属
医療、教育分野を中心に幅広く取材

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