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「天皇中心の神の国」「大事な時に必ず転ぶ」「子ども産まない女性に税金は…」失言・暴言昔から…懲りない森喜朗氏:東京新聞 TOKYO Web

 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の言葉。前日の「コロナがどういう形であろうと…」発言とともに炎上しているが、そもそも森氏は首相時代から失言、暴言を繰り返し、「資質」に疑問を持たれていた。そんな人が、なぜ組織委会長になれたのか。重ねられた発言とともに、五輪の看板の「資質」も問われている。(大平樹、中沢佳子)

◆「謝罪会見でかえって傷口広げた」

 「首相経験者なのに、有権者の半分は女性だと分からないのか。五輪の顔にふさわしくない」

取材に応じる五輪組織委員会の森喜朗会長=4日、東京都中央区で

取材に応じる五輪組織委員会の森喜朗会長=4日、東京都中央区で

 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」という発言を受け、放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは森氏にダメ出しをした。4日の謝罪会見も「仕方なくやったのが見え見え。丁寧に説明すれば悪いイメージを払拭できたかもしれないが、かえって傷口を広げた」と話した。

 女性蔑視以外の何ものでもない発言は海外メディアも一斉に報じた。国内でもツイッター上に「老害」「日本の恥」「もう辞めてほしい」などの批判が噴出した。

 ニュースサイト編集者の中川淳一郎さんは「森氏をネット上で嫌う人は多い。元首相の肩書から『森元』とあだ名を付けられ、これまでも問題発言が繰り返しネットで炎上した」と話す。今回は「#森喜朗氏は引退してください」とのハッシュタグまで登場し、トレンドワード入りした。

◆「コロナがどうあろうと五輪」「有名人は田んぼを走ったら」次々炎上

 森氏は前日の2日にも、「コロナがどういう形であろうと(五輪は)必ずやる」と発言し、炎上している。共同通信の1月上旬の世論調査で、「中止」や「再延期」を求める意見が8割を超える中での強硬論。3月に始まる聖火リレーはタレントや有名人も多く参加するため、沿道の見学者の感染対策が課題になっているが、「有名人は田んぼを走ったらいい」とも述べた。

 これに対し、タレントの田村淳さんが、ユーチューブ上に公開した動画で「理解不能」と批判。愛知県犬山市で参加する予定だった聖火ランナーの辞退を表明した。

 動画で田村さんは、自分は五輪開催を歓迎しているものの「延期派」だとし、「今はコロナが早く収束して、国民全体の行動制限をいち早く解決することが優先」と説明。「田んぼ聖火リレー」発言については、「農家の方に失礼だし、沿道に人を集める必要がないのであれば、タレントは身を引くべきだと感じた」と語った。

◆海外にも波紋「世界に顔向けできない」

 「必ずやる」発言は、豪州のニュースサイト「news.com.au」が「組織委が東京に巨大な中指を立てている」との見出しで報じた。中指を立てるのは欧米で最大級の侮辱表現で、森氏がいかに空気を読めていないかを伝えている。

 首都圏の複数の病院で勤務医を務める木村知さんは「恥ずかしいほどの女性蔑視発言。こんな人が組織委会長では世界に顔向けできない」とあきれた様子で話す。

 「医師や看護師は今後ワクチン接種に追われる。五輪開催に必要な人数を確保するのは現実的に無理だろう。早く五輪をやめると言わないと、対応を準備する選手にも医療業界にも迷惑だ」

◆底流に「上から目線」、今回も

 森氏は現役政治家のころから、数々の失言や暴言で物議を醸してきた。底を流れる差別意識や「上から目線」には、今回と通じるものもある。

 自民党幹事長時代の2000年1月、自らの選挙運動のエピソードをパーティーで披露する中で「あいさつに回ると農作業をしている人が家の中に入ってしまう。まるでエイズが来たように思われて」と発言。エイズ患者を蔑視していると批判された。

 首相就任後の同年5月には、神道政治連盟国会議員懇談会で「日本は天皇を中心にした神の国」と述べた。天皇を中心とする戦前の国家主義をうかがわせ、現憲法が定める政教分離や国民主権に反すると、激しい批判を浴びた。しかし、6月の演説会では「(無党派層は)寝ていてくれればいい」と、有権者を軽んじる発言をした。

神の国発言が問題視される中、参院本会議に向かう森首相(当時)。支持率は低迷した=2000年、国会で

神の国発言が問題視される中、参院本会議に向かう森首相(当時)。支持率は低迷した=2000年、国会で

 一連の発言で内閣支持率は急落。01年2月の世論調査では6.5%と1桁を記録し、4月に退陣に追い込まれた。それでも、03年6月には少子化問題の討論会で「子どもをつくらない女性を税金で面倒をみるのはおかしい」と言い放つ。五輪組織委会長に就任した後の14年2月には、ソチ五輪で転倒した浅田真央さんを「大事な時に必ず転ぶ」とくさし、ひんしゅくを買った。

◆失言で座をにぎわす確信的行動

 政治ジャーナリストの泉宏さんは「周囲も慣れっこで、見過ごしてきた。しかし、五輪開催が不安視され、菅政権も火だるま状態の中、こんな混乱を招くとは…。もはや失言暴走老人だ」とあきれる。

 失言で失脚する政治家も多い中で影響力を保ってきたのは、仲間内での確信的行動ゆえと見る。「森氏や麻生太郎氏のように失言を繰り返す人は選挙に強い。『それを言っちゃ、おしまい』ということもあえて言い、座をにぎわし、一部の支持者に人気がある。逆に堅実な政策通は『面白みがない』と受けが悪い。自民党の古い選挙風土そのもの」

 そんな人が、なぜ五輪組織委の会長になったのか。スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは、源流は05年に日本体育協会(現日本スポーツ協会)会長に就いたことと指摘する。「森氏は体協が牛耳る国民体育大会で、天皇が臨席する開会式に立ち会えることを名誉に思っていた。早大ラグビー部に所属した縁で、当時選考委員で、早大ラグビー部監督も務めた日比野弘氏の後押しを受けた」

◆スポーツ界と政治の距離感考えるべき

 着々とスポーツ界に根を張った森氏。谷口さんは「例えば元レスリング選手、プロレスラーの馳浩・元文部科学相は森氏が政界入りを誘い、文教族として育てた。鈴木大地・前スポーツ庁長官の事実上の後見人でもある」と話す。鈴木氏が今年3月の千葉県知事選への立候補を見送ったのも、一部の国会議員から異論が出ていることを理由に、落選した場合に初代スポーツ庁長官となった評価が危うくなるなどと、森氏が反対したためとされる。

 五輪憲章は五輪の理念を「人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の推進を目指すため、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」とうたう。奈良女子大の石坂友司准教授(スポーツ社会学)は今回の発言を「性別、人種、宗教などいかなる差別も禁じた憲章に反する」と断じたうえで、森氏という政治家をトップに据えたこと自体が間違いだったと指摘する。

 「政治からいかに距離をとるかがスポーツ界の命題。森氏の影響力や突破力を利用したかったのかもしれないが、結果的に政治に取り込まれている。多様性やさまざまな価値観を発信し、体現する人が会長に就くべきだ」

デスクメモ 過去の発言を見ていると、考え方もおのずと見えてくる。時間がたっても、大きな変化がないことも。言葉は怖い。政治家はその言葉を生業にしているはずだが、失言、暴言を繰り返す人は後を絶たなかった。閉じた世界で見過ごされてきたものが、国際基準に引きずり出されたのか。(本)

(2021年2月5日東京新聞朝刊「こちら特報部」に掲載)


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